初めてのオペラ

 NYのメトロポリタン歌劇場は、ウイーン国立歌劇場、ロンドンのロイヤルオペラハウスなどと並ぶ、世界でも屈指のオペラハウスです。私は度々NYに遊びに行きますが、一番の楽しみはMETでオペラを見ることで、オン・シーズンに行ったときは、必ず2,3本は見てきます。NYLYのBBSなどで、初めてオペラを見ようと思うのだが何がいいか?とか、どの席がいいのか?といった質問がよく出てきます。そこで、今日はそんなお話をしましょう。
 
 今シーズン(2004-2005)の演目を見るとMET Production、New Productionが4本、Repertoryが24本出ています。中には、フランク・アルファノ作シラノ・ド・ベルジュラクなどという、私がその存在自体知らなかったような作品もありますが、最初に見るオペラは、当然名前ぐらいは知っている、有名作品ということになるでしょう。New Productionではモーツァルトの魔笛が、Repertoryからは、同じくモーツァルトのフィガロの結婚、ヴェルディのアイーダ、ロッシーニのセヴィリアの理髪師、ビゼーのカルメン、それにプッチーニのトスカとラ・ボエームの7本がそれに当たると思います。その内訳は、モーツァルトがてオーストリア、ビゼーがフランスで、あとの3人はイタリアですね。
 この7つのオペラなら、どれを見ても分かりやすく、楽しめると思いますが、中でも特に初心者向けなのはどれか?オペラといえば、まず声を張り上げて朗々とアリアを歌う(ベルカント唱法)ものを思い浮かべるのではないでしょうか。モーツァルトの作品は、それとはちょっと違って、もっと軽い感じの曲でできています。この2作は、有名なアリアが目白押しですが、話の展開がわかりにくかったり、冗長だったりするので、私はあまり勧めません。ただ、今シーズンの魔笛は、ライオンキングで名を上げた、ジュリー・テイモアの新演出なので、衣装、装置など面白かったのではないかと思いますが、まだ評判は聞いていません。
 そしてオペラのもう一つの楽しみは、視覚的なものですね。それは、壮大な舞台装置だったり、豪華な衣装だったりしますが、その点、特にMETのアイーダは第一のお勧め作品です。有名な2幕凱旋の場は、メトロポリタン美術館のエジプト部門が引っ越してきたような気にさせるもので、この場面だけで100ドル以上払っても惜しくないと思います。同じ意味で、今シーズンの上演のない椿姫も、3幕の舞踏会の場面など、装置に拍手が起きる口です。椿姫も、有名なアリアが次々出てくるし、話も分かりやすいので初オペラにぴったりです。
 豪華な衣装は出てきませんが、ラ・ボエームは貧乏な二人の切ない恋を描き、ミュージカルRENTの基になったもので、涙なしには見られません。実はまだMETで見たことがないのですが、11月には見られそうです。同じプッチーニのトスカは、主要登場人物が3人だけで、話は非常に分かりやすくて見せ場も多く、時間もやや短いので初オペラ向きですが、3人だけということは、キャストの力量に左右されるので、実力のある歌手が歌ってるときのほうがいいでしょう。その点今シーズンは、マリア・グレギーナのトスカ他実力派を集め、指揮もジェームス・コンロンと充実した内容で、私も見たいです。カルメンについては私があれこれ言う必要もないでしょう。最後のセヴィリアの理髪師ですが、ロッシーニの代表作で、どたばた喜劇です。フィガロの結婚の前の話で、なんでも屋フィガロを始めとする登場人物たちが、活き活きとして非常に面白いオペラです。私のオペラ初体験は、白黒テレビで見た、NHKイタリアオペラのこの作品でした。これを見て、オペラって面白いものなんだ、と思ったのが原体験になってるかもしれません。


初めてのオペラ_b0040245_1257313.jpg写真は、開演前のメトロポリタンオペラ。
by shoeenoki | 2004-10-30 13:27 | 音楽